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■ ふたつのGO。日常に潜む本質

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在日韓国人が主人公の青春映画『GO』は、去年の秋公開され、
今年、日本アカデミー賞8部門で最優秀賞を獲得した。

実を言うと、日本アカデミー賞って、よくワカラン賞だ。
授賞式を観ると、業界内で「ごくろうさん」し合ってる感じで、
大御所さんをヨイショし、「スゴイ。サスガ」の連発だ。
製作努力をクドクド聞かされて、そういうの、観る側はシラケる。

でも『GO』はいい。邦画の域を越え、世に出ていくと思う。

『ぶんぶん便』に書かなかったけど、私はこれ、公開前に試写で観て、
「お、すごい。世間に広まり、きちんと評価されるだろう」と確信した
ものだから、私ごときがアレコレ書く必要を感じなかったんだ。

完璧な作品が表舞台に立っている。…ツッ込みようがない。

原作が直木賞受賞作品で、主演が(才能に見入られた)窪塚洋介だし、
東映がえらく力を入れて作った。
事前にきちんと広告され、やはり、正当な評価を得た。

あまり知られていないけど、同時期に『Go!』という邦画が公開された。
タイトルそっくり。『!』付いてるだけ。偶然?

こちらも青春映画だが、低予算、広告不足、ストーリーは超単純だ。
ピザ屋で働く男の子が、好きな女性にピザを届ける。それだけの話だ。
ま、東京から長崎までスクーターで宅配する、ってトコがミソなんだけど。
実はこれ、私にはすごくウケた。
「若い子」のスガスガしい馬鹿さ加減が輝いている。
主演の高田クンはカリスマ高校生というニュータイプの新人だが、
茫洋(ぼうよう)として、いい味出している。
オトボケ加減が佐藤浩市ヤングバージョン、て感じ。

しかし窪塚クンの『GO』を観ちゃうと、どうもやはり、
作品としては負ける。『!』をくっつけても、見劣りする。
映画を比べて評価するのは、はしたないコトだけどね。
タイトル酷似はマズかった。
『ピザを届けて300里』とでもすれば良かった。

両方に出演してる山崎努に聞きたい。
「なして両方引き受けたん? フツー、断わらない?」ついでに、
「どっちがお薦め?」

世間的にもJUNKO的にも評価の高い『GO』をビデオで再び観た。
2度観てますます、しみじみといい作品だ。

物語は人種差別を扱っているが、テーマはそこに留まらない。
主人公(窪塚)の言葉が光る。
「ライオンは自分をライオンと思っちゃいない。
人が勝手にそう呼ぶだけだ。
俺は俺を在日なんて思っちゃいない。俺は、俺だ」

この言葉、応用できる。
日本人は自分を黄色(おうしょく)だなんて思っちゃいない。
白人がそう呼ぶだけ。
主婦は自分を主婦なんて思っちゃいない。社会がそう呼ぶだけ。
ヤンキー? 彼女は普通の女子高生。髪が黄色いだけ。
私? 私は、私だ。

この映画の中で、私が一番好きな場面は、
主人公が自分の国籍を彼女(日本人)に告白して、フラれ、
とぼとぼ夜の道を歩いて帰るシーンだ。

キビシいフラれ方をした彼は、最悪な気分で歩く。
と、若い警官(萩原聖人)に声をかけられる。
「ちょっと君!」
彼はビビる。「外国人登録証」不携帯だったので。
ところが警官は自動販売機で缶コーヒーを買いたかっただけ。
「ねえ、120円貸してくんない?」なんて言うものだから。
イッパイイッパイの気分が、スウッと抜けていく。

「へえっ在日でも登録証要るの?」と警官は呑気にびっくりして
「じゃ、逮捕しちゃおうっかな」なんて言いつつ、コーヒーをすする。
「俺、文系だしさ、警官向いてないんだよなあ」としみじみし、
女の子の話なんかして、たばこ吸ったりする。

ついさっき、彼は国籍が理由で彼女を失った。
一方、通りすがりの警官にとって、彼の国籍はとるに足らないコトなのだ。
120円にも及ばぬコトなのだ。
その事実にふと、救われる。
本質ではないところで、この出来事は主人公を最悪から日常へと救いあげる。

問題にぶつかった時、それと正面から対峙(じ)するのは、かっこいい。
けど、やめたほうがいいな。
問題には実体がなかったりする。

日常のどうってことない瞬間にこそ、救いがある。
日常は、本質なのだ。

問題をかかえ、行き詰まってる人は、今すぐ問題を棚上げして、
犬と散歩し、友と語らい、おいしいものを食べよう。
案外答はそんなところにころがっている。
「生きるって楽しい」って、答がね。
人を苦しめてる問題なんて、たいてい、どうでもいいことだ。
食べたり、笑ったりすることに比べたら、たいしたことないんだ。
人は喜びを感じるために生まれて来る。
喜び。それが、生きる本質だ。

「自分の権利を守れない人に、人の権利を守ることはできない」
これ、福祉に携わるものの、基本だ。応用すると、
「まず自分が幸福になろう。すると周囲も幸福になる」ってコトだ。

楽しく生きるワザを子供達に教えたい。
それが世の中をよくする基本だと思う。
楽しく生きる能力のある人は、強い。…戦争をする必要もない。

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       ★ JUNKOの シネマ de ぶんぶん ★
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『GO』…ビデオ借りられます。
出演/窪塚洋介、大竹しのぶ、山崎努
原作/金城一紀 脚本/宮藤官九郎 監督/行定勲
公式サイト  http://www.go-toei.com

●窪塚クンの目ヂカラはスゴイ。観たい人はコチラ↓
    http://homepage1.nifty.com/jyk/js11.html


『Go!』…5月末盛岡でロードショー終了。早くビデオになーれ。
出演/高田宏太郎、美保純、山崎努
監督/矢崎充彦

●カリスマ高校生高田クンはこの人↓
    http://homepage1.nifty.com/jyk/js11b.html

◎5年たったら私、後者の単純話のほうが記憶に残ってると思う。
「そんなに時間かけたらピザが腐るぞ」ってハラハラしたからね。

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